カスタマーハラスメント(カスハラ)って何?
お客様は神様ではない?
目次
ハラスメントは、人との触れ合いの中で発生します。
従来は、力関係を利用するパワーハラスメント(パワハラ)やいじめやモラルに反する言動によるモラルハラスメント(モラハラ)、性的な言動によるセクシュアルハラスメント(セクハラ)など、企業内でのハラスメントに注目されていました。しかし、昨今では家庭内や友人同士といったプライベートでのハラスメントなど、状況場面を問わず、社会全体でハラスメント行為を防ぐ意識が高まってきています。
そこで今回は、「お客様は神様です」と一種のタブー扱いをされていた顧客からのハラスメント(カスタマーハラスメント、カスハラ)について取り上げていきます。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは何か
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が従業員に対して行う暴力的な言動、嫌がらせを言います。
カスハラは、小売業、接客業、サービス業など直接顧客と接点を持つ業界で広く発生しています。カスハラの行為は、モラハラやセクハラに該当する言動に加え、過剰なクレームや要求といった顧客の立場を利用したハラスメント行為が含まれます。
特に顧客のクレームや要望は、ニーズとして重要視される側面もあり、過剰な言動であっても受け入れなければならないと我慢を強いられることが多々あります。
しかし、顧客の過剰な言動は従業員の心理的、物理的な健康を害します。また、カスハラが行われる店舗や職場の雰囲気も悪化させ、他の顧客にも悪影響を及ぼす可能性があります。その結果、業績も悪化させる恐れがあります。
顧客は大切な存在ですが、ハラスメント行為に対しては厳格な対応をしていく必要があります。
なぜカスハラは起きるのか
「お客様は神様です」という誤った信念を持っている
「お客様は神様です」という言葉は、演歌歌手の三波春夫さんが、歌う時に、「神前で祈るときのように、雑念を払い、真っ新(さら)な心にならなければ完璧な藝を披露することはできない」とする心構えから生まれたと言われています。
マーケティングの観点から見ると、リピーターを増やすためにより良いサービスを提供することは大切な事です。しかし、これはあくまでサービスを提供する側の視点であり、サービスを受ける側の視点ではありません。こういった信念を誤って認識しているが故にカスハラが起きていることが多いです。
基本的にはサービスを提供する側、受ける側に差はなく、対等な立場での取引が求められます。しかし、現実的にはお金を払う側が優位に立ってしまいます。気が付かないうちに、上位の立場にあるかのような振る舞いをし、カスハラ行為を行っているのです。
ストレスの発散行為
現代社会は様々なストレスにさらされます。職場、家庭、友人関係、はたまた孤独故のストレスなど、人が抱える問題は多岐にわたります。そのため、どんな人も少なからず不満を抱えています。そんな不満をもつ顧客が、ストレス発散の手段として従業員に八つ当たりするといったカスハラ行為をとることがあります。
サービス提供者が顧客に抵抗できないことを利用して、相手の気持ちを尊重せず好きなように不満を吐き出したり、高圧的な態度を取り優越感に浸ることもあります。
また最初の態度は普通でも、途中から怒りはじめたり、従業員の小さなミスをきっかけに、ハラスメント行為を取り始めることもあります。
一般的なサービス提供者は、顧客のストレスや不満を解消することが仕事ではありません。(リラクゼーションサービスなど一部のサービスを除きます。)
しかしながら、顧客の立場を利用し、サービスの範疇を超えた要求を当然と考えている人もいる為、注意が必要です。
顧客対応マニュアルの不備
経営方針として従業員よりも顧客を優先的に考える理念を掲げている企業があります。顧客を優先して考える事は、ビジネスにおいて大切な観点です。しかしながら、顧客の要求を何でも受け入れることが良いわけではありません。
顧客を優先するために従業員をないがしろにすることは、正しい方針とはいえません。顧客、従業員両方を大切にしていく必要あります。
顧客を第一に優先する企業では時にマニュアルに「顧客の要望はすべて叶えなければならない」といった事項が書かれていることがあります。こういったマニュアルによって従業員が顧客からの過剰な要求に対抗できず、攻撃を受け続けてしまうことがあります。
顧客要望については、できるだけ叶えることも必要ではありますが、ハラスメントを助長することにもなり得ます。会社として、企業文化として、ハラスメント行為を助長するルールや規則が知らないうちに出来ていないか、確認する必要があります。
カスハラへの対策
顧客対応の見直し
カスタマーハラスメントは、顧客自身に問題がある場合が多く、会社側で対策は取りにくいと考えている方がいます。確かに、顧客自身の意識変えも重要ですが、企業側としてどのように顧客に対応するか、方針を示すことが重要です。
特に、顧客対応を断る規程やマニュアルの整備が求められます。
顧客の要望を応えることは大切ですが、限度があります。顧客がどのような言動を取った際に、顧客対応を断るのか、また断る際にはどのように実施するのか、など企業として明確にルール化していくことが大切です。
加えて、カスハラが発生した際にどこに報告すれば良いのか、業務フローも明示するとより良いです。
顧客対応を断る選択肢を持つことは、抵抗を感じるかもしれませんが、従業員が働きやすい環境を守るために勇気をもって制定してみましょう。
顧客へのポリシー提示
従業員が安全に働ける環境を保証するためのポリシーを設けるだけでなく、顧客にもポリシーを明確に伝え、不適切な行動は許されないことを示すことも効果的です。ポリシーを顧客に提示することで、従業員もカスハラを受けた際に顧客対応を断りやすくなります。
また、カスハラ対策を行っていることを他の顧客に示すことで、優良顧客も安心してサービスを受けることができます。
ハラスメント知識の習得
従業員自身が、どんな行為がハラスメントに該当するか理解させることも大切です。
ハラスメント行為を知っているからこそ、対応策を取ることができます。
攻撃的な言動は基本的には、カスタマーハラスメントに該当することが多いですが、時にはカスハラに該当しない行為もあります。誤って、カスハラとして認定してしまえば、顧客の信用を失うことにつながりかねません。
カスハラへの対応だけでなく、誤った認識を持たないためにも、従業員のハラスメント知識の定着が大切です。
まとめ
カスタマーハラスメントは深刻な問題であり、それに対処するためには会社全体での取り組みが求められます。企業は従業員を守り、健全な職場環境を維持するために、顧客対応の見直し、ポリシーの策定、ハラスメント教育に力を入れることが大切です。
また、自社の従業員だけでなく来店される顧客に対しても、自社の方針を示すことが求められます。
従業員が安心して働ける環境を作ることは、安定したサービスを提供する為に欠かせません。結果として企業のサービスの質を向上させ、顧客満足度を高めることにもつながります。
カスハラ対策は、悪質な顧客を減らし、優良な顧客を増やす取り組みとしても大切なため、積極的に行っていくことが重要ですね。
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