モラルハラスメント(モラハラ)はなぜ起きるのか?

モラルハラスメントは発覚しにくい

モラルハラスメント(モラハラ)は、同僚同士による精神的な暴力や虐待を指し、人間関係や職場などで頻繁に見られる問題です。

同僚同士は時に友人のような関係になることもあり、冗談や軽口など、一見モラハラ行為に該当するが、本人同士が問題にしていないことこともあるため、一概に判断ができないことも多いです。

もちろん、信頼関係が成り立っている中での冗談は、コミュニケーションにおいて大切なことです。そのため、なかなか対策が取れない企業も多くあります。しかし、中には冗談からモラハラ行為に発展する事例も多数あります。

モラハラがなぜ起きるのか、その背景にはさまざまな要因が絡み合っています。以下に、モラハラの主な原因をいくつか挙げてみます。

モラハラが起きる理由

人は、自身の欲求を満たすための行動を進んで行います。自身の欲求を満たす行動自体は、人として当然の行為であり、否定するものではありません。しかし、その欲求を満たすために、時に歪んだ手段を取ることがあります。その一つとして考えられるのがハラスメント行為です。

相手よりも上の立場になりたい

ハラスメントは、力関係が不均衡な状況で起きやすいです。上司と部下、親と子供、教師と生徒など、権力を持つ側がその力を悪用して相手を支配しようとする、いわゆるパワーハラスメントで顕著に見られます。また自分の優位性を示すために相手を抑えつける行動は、同僚間でも起きます。むしろ、立場が対等であるからこそ、自身を上に見せたいと思い、モラハラをすることがあります。

精神的な満足感の追求

他人を支配したり傷つけたりすることで、精神的な満足感や優越感を得ようとする場合があります。
他者を攻撃することにより、「言ってやったぞ!」や「相手を正してやった!」など、一種の自己満足や自尊心を高めるための手段として行われます。この場合、周りからすれば期待を損なうような行為であったとしても、本人にとって満足がいくかどうかを重視していることが多いです。そのため、より高い満足感を得るために繰り返す、またはより過激化した行動が行われる場合もあります。

過去のハラスメント行為による成功体験

過去に自分がモラハラを受けた経験がある人が、同じ行動を他人に対して行うことがあります。これは、過去の成功体験による学習された行動パターンによるものです。

人は、失敗した経験、成功した経験から行動を選択します。失敗につながる行動はなるべく避けるようになり、成功につながった行動は、積極的に採用します。

例えば、厳しい叱責を受けながら営業成績を達成することができた人は、営業成績を上げるためには厳しい叱責が必要だと、考える方が多いです。そして、叱責を行う事が成功への近道と考え、他者に対しても同様の行為を行うことに繋がります。これは、営業成績の向上=厳しい叱責と自身の経験から裏付けられるためです。

一度、成功として身に付けた経験を変えることは簡単ではありません。特に何度も同じ行動を繰り返し、その都度成功体験を得ている方は、変化させることに強い抵抗を示します。

ストレスの発散行為

現代社会は様々なストレスにさらされます。職場、家庭、友人関係、はたまた孤独故のストレスなど、人が抱える問題は多岐にわたります。そのため、どんな人も少なからず不満を抱えています。そんな不満をもつ人が、ストレス発散の手段として従業員に八つ当たりするといった行為をとることもあります。一時的な行動では終わらず慢性的に続くモラハラ行為にもつながる為、従業員のストレスチェックは重要な課題となっています。

社内文化による影響

社内文化で、攻撃的な言動や支配的な態度が許容されるていることがあります。このような環境では、モラハラが発生しやすくなります。

一般的な社会では許されないような暴力行為が会社内で横行していても、それを「当たり前のこと」として企業が受け入れていると、社員がその行為自体を問題であると認識することが難しくなります。そして、それらの行動が継続し、慢性的なハラスメントを生み出すことに繋がります。
この状態では正常な判断を行う事が難しく、ハラスメント行為が正当化され、むしろハラスメントを受ける自分自身が悪いと自己否定を行ってしまう方も多くいます。
そして、身体的・精神的ダメージが蓄積されていき、働けない状況へと社員を追い込むことになります。

モラハラの防止と対策

感情のコントロール、自己肯定感の向上

モラハラを代表とするハラスメント行為は、感情に作用されることが多いです。そのため、自分の感情を適切にコントロールする方法を学ぶことが重要です。ストレス管理やリラクゼーション技術を活用することが有効です。

またモラハラの加害者、被害者両方の自己肯定感を高める事も大切です。自己肯定感が低いために、他者に対して無理に優位に立とうとしたり、他者を貶めるモラハラ行為を取ってしまうことがあります。また、自分はできない人間だからこそモラハラを受けて当然と考えてしまうなどモラハラ行為を助長することにもつながります。

自己肯定感を高めるために、1on1ミーティングといった個別相談に加え、成果に対する正当な評価、自己啓発の受講等、会社側からのアプローチだけでなく従業員自らの行動を促すことが大切です。

自己認識の変容

人の行動は過去の経験による認識に紐づいています。そのため、ハラスメント行為を是とする認識を変容させていく必要があります。

大抵の場合、ある行動=成功といった形で人は認識しています。しかし、必ずしもある行動=成功に因果関係があるわけではなく、時に全く関係のない事柄を結び付けてしまっている場合があります。特にハラスメント行為の場合は、この全く関係のない行為を正当化して認識していることが多いです。

この認識を変化させる方法として、カウンセリングがあります。ハラスメント行為を正当化するきっかけとなった出来事をヒアリングし、本当にその行為が成功に導いたのか、それとも別の要素があるのではないかといった新たな気づきを与え、行動の正当化を少しずつ変化させていきます。

自己認識の変容は、自分自身でも可能で、エニアグラムといった自己診断ツールを用いながら認識を変化させていくことも効果的です。

ハラスメントの知識とサポート体制の充実

従業員自身が、どんな行為がハラスメントに該当するか理解させることも大切です。
ハラスメント行為を知っているからこそ、対応策を取ることができます。

特にモラハラ行為の場合、同僚同士の間で発生する為、上司や責任者が行為を把握できないこともあります。そのため、報告ができるように相談窓口といったサポート体制も併せて整備することが求められます。

まとめ

モラハラの原因は、単純に見えて、人の感情や想いに結び付いていることが多く、一つ一つひも解いていくには時間がかかります。一方で、ちょっとした言動への注意でモラハラを防いでいくことは可能です。

職場は半パブリックな場所であり、言動に気を付けることは社会人として必要なことです。しかし、従業員自身で自分の言動に気を付けることはなかなか大変です。そのため、企業側がモラハラ行為に発展しない様な文化の形成や体制構築、研修など様々な対策を取っていくことが重要ですね。

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