【パワハラの分類⑥】個の侵害

職場・業務に関係のないプライベートに対するハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)には大きく6つに分類されています。

パワハラと言えば、殴る蹴るといった行為を想像される方が多いですが、それだけではありません。そもそもパワハラは、職場での権力関係を背景にした嫌がらせや過度な圧力を指します。そのため、暴力行為以外にも精神的な嫌がらせ、暴言等もパワハラに該当することがあります。「受け取る側がどう感じるか」が重要なポイントです。

今回は、6つの分類の内の「個の侵害」について、解説します。

個の侵害

職場内で起こるのがパワハラと考えられがちですが、プライベートに過度に干渉することもパワハラに含まれます。コミュニケーションの一環としてプライベートに触れることは、時に必要な場面もありますが、根掘り葉掘り聞くことはパワハラに該当します。

趣味や休日の過ごし方など、プライベートに関することは様々であり、一概に「○○の話題をしてはいけない」と決めることはできません。人によってはプライベートを話すからこそ、相手のことを知ることができると考えられている方もいます。

「興味があった」「共通の話題を見つけたかった」「相手に好かれたかった」など、悪意が無い場合も多いですが、プライベートについては、人によっては隠したい内容、聞かれたく内容もあります。
自分にとっては何でもない事であっても、他者にとってはとても重要な事もあります。

企業という半パブリックな環境では、相手に配慮し、なるべく聞かない様にすることが望ましいと思われます。

事例

➀有給を取得する際、理由をしつこく聞かれた

Aさんは、都内に複数の店舗を持つアパレルにて販売員として勤めています。アパレル店舗自体は休日が無く、従業員は完全週休二日制のシフト体制で働いています。残業も少なく、夏・冬の長期休暇も取得でき、Aさんは働く環境、待遇ともに満足していました。

ある時、配置換えによってAさんが務める店舗の店長が交代することになりました。業務内容には大きな変化はありませんでしたが、有給取得に際して、必ず店長に許可を取らなければならない様になりました。以前の看護師長でも、許可は必要でしたが、余裕をもって申請していれば、取得理由は特に気にせず許可を出してもらえていました。しかし、新店長は「どこに、誰と、何をするのか、その日でなければならない理由」など、事細かに説明し、納得しなければ許可を出してもらえません。

そこまで話す必要はないと抗議しましたが、店長からは「何かあった際に把握できなければいけない」と、聞く耳を持ちませんでした

Aさんは、本社に相談し、「有給取得は従業員の権利であるため、事細かに説明する必要ない」と新店長に注意していただくことで状況は改善されました。

それからAさんは1年後、別店舗へ異動となりましたが、いまだに有給取得時には緊張してしまいます。

➁時間外や休日に何をしているのか頻繁にきいてくる

Bさんは、全国に複数の店舗を持つ整体院に整体師として働いています。Bさんは、YouTubeでゲーム実況を配信することを趣味にしていましたが、収益は得られていなかった為、会社には内緒にしていました。もちろん、配信では会社のことは一切話さず、自身の情報が漏れることが無いように気を付けていました。

ある時、新入整体師の歓迎会にて、休日には何をしているのか話題にあがりました。参加者がそれぞれ答える中、Bさんは恥ずかしさもあったため、SNSを見ること、とやんわりと伝えました。歓迎会の場では、特に追及されませんでしたが、職場で休憩時間になると、店長が「SNSで何を見ているのか」「どういった配信が好きなのか」と頻繁に聞いて来るようになりました。またスマートフォンを見ていると、「ちょっと見せてよ」「何を見てるの?」と確認するようになりました。
Bさんは、不快に感じた為、本社事務へ相談することにしました。

本社事務から店長に対して注意が行われましたが、店長は「コミュニケーションの一環で、そんなことを言われる筋合いはない」と認めませんでした。注意後はしつこく聞かれることはなくなりましたが、店長を見ると嫌な気分になってしまうため、Bさんは、退職することにしました。

「個の侵害」を防ぐためにはどうすれば良いか

被害者側の対策

  • 証拠を保全する
    個の侵害は、口頭で行われる場合が多く証拠として残りにくいことが多いです。証拠となるもの(例:ボイスレコーダー、画像、動画など)を保全しましょう。また、具体的な書面にて業務指示をもらい、証拠として保全することも一つの手段です。
  • 信頼できる人に相談、報告する
    信頼できる同僚、上司、またはハラスメント相談窓口に報告してください。また、社内では対応が難しい場合は、友人や家族、外部支援機関を利用しましょう。特に過小な要求は、本人ではなく周囲が気が付くこともあります。気が付いた時にはすぐに相談、報告を行いましょう。
  • メンタルヘルスのサポートを利用する
    ハラスメントによる恐怖が持続する場合は、心理カウンセラーやメンタルヘルスの専門家からのサポートを受けることを検討してください。精神的苦痛は、時間だけでなく時に外部からのサポートが必要になることがあります。無理をせず、医療機関を利用してください。

加害者側の対策

  • 自己反省と認識の向上
    加害者は自身の行動がパワハラに該当すると認識していない場合が多いです。自分の行動が他人にどのような影響を及ぼしているかを理解し、パワハラの定義や事例について学び、自己の行動を振り返ります。また、パワハラ行動はしばしばストレスが原因で引き起こされます。ストレスのサインを早期に認識し、適切なストレス解消法(運動、趣味、休息など)を見つけることが重要です。
  • コミュニケーションスキルの習得
    効果的なコミュニケーション方法を学び、批判やフィードバックを伝える際にも、相手の尊厳を守る言葉遣いや態度を心掛けます。他人の立場に立って物事を考える訓練をすることで、相手の感情や立場を理解し、共感する能力を高めます。
  • マネジメント力の向上
    マネジメント力が低いために、部下との適切な指導、指示ができずハラスメントにつながることがあります。部下指導や指示、リーダーシップなど、上席者として求められるマネジメント力の向上が大切です。

会社としての対策

  • 教育と研修の機会の提供
    全ての従業員に対して、パワハラの定義、事例、影響についての教育を実施しましょう。リーダーシップ研修を含め、上司や管理職に対しては、適切なコミュニケーション方法やチーム管理のスキル向上に焦点を当てた研修を提供しましょう。内部だけでなく外部機関を利用し最新の情報を取得することも大切です。
  • 意思決定者による明確なガイドラインとポリシーの提示
    経営層や管理職が職場におけるパワハラに対する姿勢を明確にし、具体的な行動規範やポリシーを策定・公開しましょう。パワハラが発覚した場合の報告ルートや処理フロー、加害者に対しての懲戒処分など具体的に定めていく必要があります。
    従業員が働きやすいように、透明性の高いガイドラインの策定を行う事が重要です。
  • ハラスメント相談窓口を設置
    被害者だけでなく、加害者に対しても必要なサポートやカウンセリングを提供できるようにハラスメント相談窓口を設置しましょう。またパワハラの兆候や報告があった場合は、迅速かつ公正に調査を行い、適切な対応をとりましょう。加害者に対しては、カウンセリングの提供、再教育プログラムへの参加を促しましょう。自社内だけでなく、外部機関を利用することも大切です。

まとめ

パワハラのうち「個の侵害」は、プライベートへの干渉に対する認識の甘さが原因となっている場合が多いです。また、コミュニケーションを取るための話題の一つとして、有効な場合もある為、「プライベートな話こそ親しくなるきっかけ」と考えている人も多いです。確かに、そういった一面があることは否めませんが、プライベートの内容は、業務とは関係のない事柄であり、より一層「相手がどう感じるか」を考える必要があります

事前に防止できるようにハラスメント行為が見受けられた場合は、ハラスメント窓口など適した機関に相談を行ってください。加えて意識向上のため会社として定期的なハラスメント教育、マネジメント研修を通して防止していくことをお勧めします。

自社内で行う事も必要ですが、最新のハラスメントの情報を得るために外部研修を受講することもお勧めします。

当社では、ハラスメントに関する研修を実施しております。心当たりのある方は、ぜひ一度当社の研修を受講してください。研修依頼は、お問合せフォームからご連絡ください。