【パワハラの分類➁】精神的な攻撃

暴力を伴わない精神への攻撃について

パワーハラスメント(パワハラ)には大きく6つに分類されています。

パワハラと言えば、殴る蹴るといった行為を想像される方が多いですが、それだけではありません。そもそもパワハラは、職場での権力関係を背景にした嫌がらせや過度な圧力を指します。そのため、暴力行為以外にも精神的な嫌がらせ、暴言等もパワハラに該当することがあります。「受け取る側がどう感じるか」が重要なポイントです。

今回は、6つの分類の内の精神的な攻撃について、解説します。

精神的な攻撃

脅迫や名誉棄損、侮辱、暴言といった相手を攻撃する言動が該当します。業務上、必要な指導において強い言葉を発することも必要ですが、一定限度を超えた暴言や業務上に関係のない事柄での否定は、パワハラに該当します。

精神的な攻撃を行う人にヒアリングを行うと、「感情が高ぶり我慢ができず、暴言を吐いてしまった」といった感情のコントロールがうまくできず行ってしまうことが多いです。
また、「これぐらいは言われても当然だろう」「指導においてはきつく言わなければ人は行動しない」といった認識の甘さが、パワハラにつながっているように思います。

何気ない発言が相手を傷つけ、精神的に追い込むことは十分に考えられます。育ってきた環境や価値観など、人によって言葉の捉え方が異なる為、例え悪気が無かったとしても相手が精神的な攻撃を受けたと感じてしまうため、注意が必要です。

※遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない従業員に対して一定程度強く注意をするなど、業務上必要な言動はパワハラに該当しません。ただし、業務上必要な事柄だからと言ってすべてが許されるわけではありませんので、注意が必要です

事例

➀他の社員がいる前で、「ダメ人間」「お前なんかやめてしまえ」と何度も大声で叱責された

ある朝、社員Aは、体調不良のため午前休みを取得し、午後に出社しました。

出社すると上司に「体調不良で遅れてくるとは、社会人として責任感が無いのではないか」と小言を言われました。午前休みは会社のルールに従い、取得したため、文句を言われる筋合いはないと思い、「すいませんでした」と生返事で返答しました。その言動に怒りを感じたのか、上司は「まともに謝ることもできないのか、このダメ人間!やる気がないならお前みたいな人材はいらん!辞めろ!」と社員Aを怒鳴りつけました。丁度昼休みが終わったタイミングであったため、怒鳴り声は同じフロアにいた同僚全員に聞こえていました。これを良いタイミングと考えたのか上司は社員Aの過去のミスを取り上げ30分近く𠮟り続けました。

その後、同僚の間で社員Aは仕事ができない人とレッテルが貼られ、ちょっとしたことで揶揄されるようになっていきました。

社員Aは、会社に居場所がないと感じるようになり、軽い鬱症状を発症し、退職することとなりました。

➁「馬鹿」「給料泥棒」など人格を否定するような言葉で叱責された

保険会社に営業職で勤める社員Bは、仕事よりも趣味を大切にしており、素早く仕事を終わらせることを大切にしていました。営業成績は、同僚と比べても高くはありませんでしたが、会社が示す営業ノルマは最低限達成しており、与えられた業務は遂行していました。

しかし、ある日突然、社員Bの営業担当エリアの配置換えが行われ、新規エリアを担当することになりました。そのため、新規顧客獲得に時間がかかってしまい、営業ノルマを達成できない月が続きました。営業部の責任者から呼び出しを受け、達成ができるように仕事のやり方を変える様、指示を受けました。
社員Bは指示を受け入れた上で、新エリアの担当は自身には荷が重いことを伝え、営業ノルマを少し下げていただくか、もう少し時間を欲しいと責任者に打診しました。

責任者は、半分笑いながら「お前、馬鹿か?残業でもなんでもできることをやってから言ってこいよ。今のままだと給料泥棒だぞ」と小言を言われ続けました。最終的に「君には期待している。3ヶ月現状のまま様子を見るから頑張ってくれ」と責任者は締めくくりましたが、社員Bは自身が否定されたように感じ、3ヶ月も待たずに退職しました。

精神的な攻撃を防ぐためにはどうすれば良いか

被害者側の対策

  • 証拠を保全する
    精神的攻撃は、物理的な証拠として残りにくいことが多いです。証拠となるもの(例:ボイスレコーダー、画像、動画など)を確保しておくことが大切です。
  • 感情コントロール(アンガーマネジメント)の習得
    精神的な攻撃を行う人は、感情のコントロールができずに怒りに任せた言動を取っていることが多いです。アンガーマネジメントなど感情のコントロール方法を身に付けましょう。
  • メンタルヘルスのサポートを利用する
    ハラスメントによる恐怖が持続する場合は、心理カウンセラーやメンタルヘルスの専門家からのサポートを受けることを検討してください。精神的苦痛は、時間だけでなく時に外部からのサポートが必要になることがあります。無理をせず、医療機関を利用してください。

加害者側の対策

  • 自己反省と認識の向上
    加害者は自身の行動がパワハラに該当すると認識していない場合が多いです。自分の行動が他人にどのような影響を及ぼしているかを理解し、パワハラの定義や事例について学び、自己の行動を振り返ります。また、パワハラ行動はしばしばストレスが原因で引き起こされます。ストレスのサインを早期に認識し、適切なストレス解消法(運動、趣味、休息など)を見つけることが重要です。
  • コミュニケーションスキルの習得
    効果的なコミュニケーション方法を学び、批判やフィードバックを伝える際にも、相手の尊厳を守る言葉遣いや態度を心掛けます。他人の立場に立って物事を考える訓練をすることで、相手の感情や立場を理解し、共感する能力を高めます。
  • マネジメント力の向上
    マネジメント力が低いために、部下との適切な指導、指示ができずハラスメントにつながることがあります。部下指導や指示、リーダーシップなど、上席者として求められるマネジメント力の向上が大切です。

会社としての対策

  • 教育と研修の機会の提供
    全ての従業員に対して、パワハラの定義、事例、影響についての教育を実施しましょう。リーダーシップ研修を含め、上司や管理職に対しては、適切なコミュニケーション方法やチーム管理のスキル向上に焦点を当てた研修を提供しましょう。内部だけでなく外部機関を利用し最新の情報を取得することも大切です。
  • 意思決定者による明確なガイドラインとポリシーの提示
    経営層や管理職が職場におけるパワハラに対する姿勢を明確にし、具体的な行動規範やポリシーを策定・公開しましょう。パワハラが発覚した場合の報告ルートや処理フロー、加害者に対しての懲戒処分など具体的に定めていく必要があります。
    従業員が働きやすいように、透明性の高いガイドラインの策定を行う事が重要です。
  • ハラスメント相談窓口を設置
    被害者だけでなく、加害者に対しても必要なサポートやカウンセリングを提供できるようにハラスメント相談窓口を設置しましょう。またパワハラの兆候や報告があった場合は、迅速かつ公正に調査を行い、適切な対応をとりましょう。加害者に対しては、カウンセリングの提供、再教育プログラムへの参加を促しましょう。自社内だけでなく、外部機関を利用することも大切です。

まとめ

パワハラのうち精神的な的な攻撃は、被害が表面上見えにくい一方で心に大きな傷を負いやすいハラスメント行為です。事前に防止できるように定期的な教育、研修を行う事が大切です。

自社内で行う事も必要ですが、最新のハラスメントの情報を得るために外部研修を受講することもお勧めします。

当社では、ハラスメントに関する研修を実施しております。心当たりのある方は、ぜひ一度当社の研修を受講してください。研修依頼は、お問合せフォームからご連絡ください。